これからの調剤薬局はどうなる-消費税8%時代を迎えて(2)

調剤薬局の開局ラッシュで、薬剤師不足に拍車?

1802681_211-318消費税率が8%となった2014年4月、地方でも新たに調剤薬局が続々とオープンしました。

全国大手の調剤薬局会社から、地元大手、個人薬局まで、経営規模の大小にかかわらず、この機会に、と出店しています。

調剤薬局会社は一般的に、医薬品卸会社や、これまでに関わりのあった開業医、その知り合いの医師などからいち早く、「調剤薬局を出してほしい」などの情報を得て、薬剤師、出店場所の確保などのメドを立ててから、開局準備にかかります。

各社とも消費税率が8%に上がるとの見通しが深まった2012年秋ごろから準備を進め、2014年4月になって一斉に薬局を新規オープンしたため、薬剤師不足に一気に拍車がかかっている状態になっています。

消費税8%時代を迎え、なぜ、病院、クリニックなどの医療機関が処方せんを外部に出し、それに伴い、門前に調剤薬局が新規開局するという動きが活発になったのでしょうか。

前回も申しましたが、保険診療報酬と薬価には消費税はかかりません。つまり、患者さんが消費税を払わなくてもいい仕組みになっています。

では、消費税分はだれが負担するのか。それは、病院、クリニックなどの医療機関(調剤薬局も同様)です。

薬の仕入れには消費税がかかります。しかし、患者さんからは増税分も含めその分の消費税がいただけません。そのため、消費税が3%上がると、病院やクリニック側に消費税増税分の負担が増え、医療機関の薬価差益(薬を患者さんに出すことによる利益)がさらに減少し、薬を院内処方で出しても、利益が出ず、手間ばかりかかる、ということになります。

開局ラッシュは、見切り発車!!

実際、ある総合病院の薬剤管理担当者は「薬剤には期限があるものが多く、どうしてもロスが出る。さらに薬剤だけでなく分包機の紙やインクなどの周辺部分の経費も結構かかる。ただでさえ低い薬価差益が、消費税3%アップでさらに減少すると、薬剤部門だけで見ると赤字になってしまう」と言います。

この流れの中で、病院、クリニックの院外処方化が進み、2014年4月前後の調剤薬局開局”ラッシュ”となったのですが、ここに来て、薬剤師不足という問題が浮上しつつあります。

一つは、調剤薬局会社が、薬剤師確保のメドが中途半端なまま、見切り開局しているという点。もう一つは、調剤薬局会社がこれまで以上に社員の薬剤師に気を遣い、引き止めるなどの努力をしていること。これに、ただでさえ薬剤師不足だったところに、薬剤師の国家試験合格率が2014年は60.84%と低迷するなど、薬学6年制になっても、一向に薬剤師不足が解消しないなどの根本的な問題が加わって、薬剤師の人手不足は深刻化しつつあります。

来(きた)る消費税10%時代にどうなる

消費税率10%は2017年に延期されましたが、。延期されたとしても10%になった場合、処方せんを院外に出す病院やクリニックはさらに増え、調剤薬局も益々増えるだろうと予想されています。

調剤薬局にとっては、新規開局は大きなビジネスチャンスです。調剤薬局は処方せん1日当たり40~50枚以上だったら十分利益が出ます。調剤薬局会社に出店のチャンスが訪れているから、この機を逃さず店を出したいという積極的な経営姿勢もわかります。しかし、その一方で薬剤師不足にさらに拍車がかかる可能性もあります。

これから、調剤薬局に勤めようとする薬剤師さんの場合、給与、待遇面もそうですが、薬剤師の人員配置など、人的な環境についても考える必要がありそうです。

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